最近では、故人の供養の方法として散骨を選ぶ方が増えています。その中でも注目されているのは、海に遺骨を撒く「海洋散骨」です。海が好きな方や思い入れがある方にとっては、とても魅力的な方法と言えるでしょう。この記事では、海洋散骨を検討している方に向けて、種類や費用、流れや注意点といった基礎知識を紹介します。
概要と種類
海洋散骨とは一体どのようなもので、どのような種類があるのでしょうか。
海洋散骨とは
お墓に納骨せずに、粉末状にした遺骨を撒いて自然に還すことを散骨と言い、海で行うことを「海洋散骨」と呼び、特に多いタイプです。
海に遺骨を撒くことは、現在の法律では特に禁止されていません。お墓を持つ必要が無く、亡くなった後に自然に戻ることを有意義だと感じる方もいるので、需要が高まっています。
芸能人と海洋散骨
芸能人では俳優の石原裕次郎さん、兄で作家の石原慎太郎さん、落語家の立川談志さん、漫才師の横山やすしさんなどが選択しました。
海が好きだった人や、故人が望んでいたケースが多いです。例えば石原慎太郎さんは生前「骨は必ず海に散らせ」と話しており、ご家族が神奈川県の葉山町沖から行いました。
種類と相場
散骨には3種類があり、費用は方法によって大きく異なります。
一家族だけで船を貸し切って行う個人散骨が最も高く、大体15万円から40万円です。
その分自由に行えるのも特徴で、故人の生前好きだった音楽を流す、お別れの会などのセレモニーを行う、といったこともできます。
複数の家族と同じ船に乗り、一緒に行う合同散骨は、10万円から20万円が相場となっています。
2組から3組程度の家族が合同で行うことが多く、大人数になる心配はあまりありません。個人よりも安く、家族が立ち会うことができるのが魅力です。
最もリーズナブルなのは業者に依頼する委託散骨で、3万円から10万円程度となっており、10万円以下でも十分行えます。
住んでいる場所が海から遠くて行きにくい、という方でも可能です。
主な流れについて
一連の流れについて、以下で見ていきましょう。
- 業者に依頼する
個人で行わない場合は、依頼する専門業者を探す必要があります。
需要が高まっていることから、業者は増えてきました。インターネットなどを使って複数の企業を比較し、見積もりを出してから信頼できると感じた企業にお願いしましょう。
実際に依頼する時は、申込書や同意書の他に埋葬許可証(コピー)なども提出します。
申し込んだ後は日時を決める打ち合わせを行い、希望があればその時に伝えておくこと良いでしょう。
- 遺骨を業者に渡す
遺骨を渡し、業者に粉骨してもらいます。粉骨の際は、2mm以下のパウダー状にするという決まりがあります。
遺骨の全てを散骨せず、一部を手元に残しておくことも可能です。業者によってできる所とできない所があるので、気になった方は一度確認してみてください。
- 実施場所へ船で移動する
用意された船で、指定された場所に移動します。合同であれば、複数の家族が同船します。
ポイントに到着した際に、お別れのセレモニーを行う場合も多いです。セレモニーの内容としては献花を行うことが一般的で、花は業者側が用意するケースが多いですが、家族側で故人が好きだった花を用意することもできます。
- 散骨を行う
お別れのセレモニーが終われば、実際に行います。
粉骨したご遺骨を水に溶ける容器に入れて撒く、そのまま海に流すなど、方法は業者によって様々です。どのような方法か知りたい場合は、事前に業者に確認しておきましょう。
一通り終わると、出港した場所に帰ります。プランによっては、戻る前に周辺の海を回ってクルージングを行うといったサービスもあります。
- 散骨証明書を受け取る
後日、業者から実施したことを証明する「散骨証明書」が発行されます。
受け取った時は、内容に間違いが無いか確認するようにしましょう。実施した場所を示した海図など、記念品が貰えるケースもあるようです。
注意点
実施の際の注意点には、どのようなものがあるでしょうか。
業者選びに関すること
業者は年々増加傾向にありますが、中には悪質な業者も存在します。
トラブルの例を挙げると、マナー違反や、高額な追加料金を請求された、といったケースがあるようです。
信頼できる業者を選ぶ際のポイントとしては、適切な場所で行うといったルールをしっかりと把握しているかどうか、丁寧に相談に乗ってくれるかどうか、などがあります。他にも、詳細な内容の見積もりを出してくれるかどうかも重要です。
直接会わずに電話やインターネットだけで申し込みをさせる、料金の安さだけをアピールしている、といった業者は要注意です。
服装に関すること
一般的な火葬やお葬式では、喪服を着るのが一般的となっています。
しかし海洋散骨の場合は、平服を着ることがマナーです。散骨における平服とは私服のことです。海には海水浴や観光で訪れている人が多くいます。そのような場所に喪服を着た人がいると、違和感を覚え、暗い気分になったりする可能性もあるでしょう。そういった理由から、海で実施する場合は平服を着ることが正しいとされているのです。
喪服で無ければ服装に特に決まりはありませんが、動きやすい服装や、ゆったりとした服を着るようにするのが良いでしょう。靴に関しては、ヒールなどは動きにくいので避けて、スニーカーなど動きやすい物を履くようにしてください。
残った遺骨に関すること
全ての遺骨を撒いても良いですし、一部だけを撒くことも可能です。
遺骨を残しておきたいという場合は、家などに置いておける「手元供養」も人気となっています。小さな骨壺に入れる、アクセサリーに加工するなど、好きな方法を選ぶことができます。
実施しない分の遺骨を分骨すること自体は問題ありませんが、お墓に納骨したい場合は「分骨証明書」が求められるので、注意が必要です。分骨証明書は、墓地や火葬場の管理者から発行されます。
海に流せるものに関すること
故人が生前使っていたものを、遺骨と一緒に海に流してあげたいと考える方もいると思います。
しかし、自然に還らないものは環境汚染につながるので、許可されていません。例えば、プラスチックやビニール、金属などの製品を流すことはできないので注意です。
花やお酒などは、流しても良いとされています。花は生花のみオッケーで、造花はNGとなっています。生花にラッピングがされている場合は、必ず外しましょう。
他にも、水に溶ける紙を使っているなら手紙は流しても良い、としている業者もいます。
まとめ
従来の方法にこだわらない新しい形として、海洋散骨は注目されています。海を愛していた人や海に縁があった方にとっては、最後に好きだった場所に還ることができれば、大きな喜びとなるでしょう。故人を気持ちよく送り出すためにも、事前にルールやマナー、相場などを知っておくことは大切です。検討している方は、この記事で紹介した事を参考にしてみてはいかがでしょうか。